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エッセイ(五月の烏賊)

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金杉のアパートは静かな所で隣は竹の林であった。
アパートは白ペンキの建物で、基礎のところに生え出した先の曲がった竹の子を拝借して、干し貝柱を入れた竹の子飯を作った船橋の5月がある。
5月は若葉に萌え、お腹にすくっとくる浮き立つ空気のぬるみと葉はセルロイドのように太陽を緑に透かし美しい、私の大好きな希望の季節でもある。

私は外食を好まず、昼間は営業の外交で仕方がないにしても夜は深夜に帰ってもきまって自炊をした。
誰もが思い浮かべるサンプル品のような料理を供されること事態がいやなうえ、一人の食堂での夕飯は何ともわびしく、つまらないのである。
つね日頃の心の貧しさが増幅されるのか、首がだんだんうなだれてひどく楽しくないのである。
それと事実、おざなりの具材での料理からは盛り上がって来るときめき、よろこび、栄養いっぱい的な豊かさがないのである。

つまみ上げる割り箸の先がいつの間にか料理の批評にかわり、自分であればこれを取ってあれを入れてと具材の入れ替えが次から次へと止めどないのである。
それがだんだんコップの音にテーブルに、インテリアに、お店全体に、すでに料理人からコーディネーターになっているのである。

隣のテーブルの子供の満面の笑顔にわが子をだぶらせわれに返るのである。
なにやら白いものがコップの水面に、じっと目をやると三日月が映りゆれているのである。
この食の小さなクリエイティブな思考の余韻に不思議に満たされて店をでる。

自炊のキッチンに立つとレシピは次から次へと無尽蔵とは言わないが沸いてくるのである。
深夜12時を過ぎてもカレーを作りたいとなれば2時3時まで平気の平左である。
牛筋を煮込んだ濃厚でこってり洋食カレーからサラリとしたスパイシーなアジアンカレーまでそのバリエーションのいい加減さには困ってしまうのだ。
50種類のカレーを作る自信はある。
単身赴任時、結局は冷蔵庫のストックと乾物食材を目で確かめてひらめかせるのであるが、麦とピーナツのカレー、するめとインゲンのカレー・・・などなどあるものだけで作る料理も実に楽しいものである。
ひらめいた食材と味覚の理想はあるにしても、たまの休日にあれやこれやと買い集めて、さあ作るとなると欲望の船旅に少々すでに疲れて、後ろめたさに似たような妙な心持にもなるのである。

この時期あみ出した烏賊の塩辛のレシピを紹介したい。
これは私の全くのオリジナルレシピである。
途中経過が似ているとすればそれはプラトンが言うイデアで、イデアとは真の実在、不変の真理であるからいろいろな所で同じ様な方法が実在するのかもしれない。
烏賊の塩辛ごときで大げさで鼻持ちならない話であるが是非是非お試しいただきたい。

1.手を石鹸でキレイに洗い水でキレイに流す。
  まな板はキレイに洗い包丁もキレイに洗う。

2.イカは新鮮なもの、わたを取り皮をむく。

3.イカの身の水分を抜く為に何枚ものキッチンペーパーにくるんで冷蔵庫の中で一晩かけイカの身の水分をぬく。

4.わたに塩で見えないくらいにたくさん振り、これも一晩かけて水分を抜く。
  わたの水分がよく抜けるようにアルミホイルを洗濯板状に凸凹にしてわたが水に浸かった状態にしない。

5.脱水された身を適宜にきり、脱水されたわたをきれいなペーパータオルで汚れた塩をぬぐい、わたを手でしごきながら器にいれ身と混ぜ合わせる。

6.混ぜ合わせながら少し塩を足し好みの塩梅にする。
  これを2日くらい寝かせると実に濃厚でぽってりとした生臭くないイカの香りのするおいしい塩辛ができあがる。

7.柚子の汁や皮はイカの香りを大切にしたいので入れない。

8.このままで実に美味しいのであるが、もっと美味しくするために、イカ一杯の塩辛あたり、ヨーグルト大匙半杯から1杯を入れる。
  乳酸菌が程よく醗酵を促し、わたの脂肪と塩が練れ、たとえようもない旨さ請け合い。

この極上の烏賊の塩辛を食せば腹の中が幸福で浮かれ状態に、少々の酒と薪ストーブとログハウスの中であれば更に歓びは高みに昇り、心もちは極楽極楽である。

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