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ログハウス,会長解剖
ログハウス,会長解剖

 

もう何年も前のアジサイの咲く頃、フィンランドの取引先の奥さんのキリスティが亡くなり弔問に訪ねた。
約一年前の彼女は笑顔でカレリアンピーラッカ(米を潰して木の葉状にしたスナック菓子)を作って振舞ってくれた。
急に胃を患いそんなにやせずに亡くなったと言う。
黒々とした針葉樹の下の埋葬、ガラーンと鳴り響く教会の鐘の音の中、たむける花束を持ちながら母の死を思い出した。

二十一歳の夏、私は伊豆の海に遊んだ。
宿屋の姉さんに弁当を作ってもらい毎日のように通った浜辺の木造の漁師小屋、銀灰色に風雨にさらされて生ける物の変わりゆく姿、ぼろ雑巾のような色と木肌の小屋に、妙にいとしい美しさを感じた。
その漁師小屋をスケッチした。
私がわび、さびを感じ、そして見た最初の意識した風景であった。
帰りの栃木駅からの砂利道は真昼日で白く眩しく静まりかえっていた。
家業の旅館の家の中はほの暗く、「お帰りなさい」と言う長火鉢の前の母はいつもより小さく見えた。
それから直ぐに私の母は亡くなった。
ふくよかな胸元の母はいつも和服を着ている人であった。

埋葬が終わりホテルでの所在無さにアルという製材係りの青年が来てくれ、彼の持つサマーコテージに連れて行ってくれた。
夜十時を過ぎても外は白夜でまだ明るい。
モーターボウトでヤースヤルビ湖を走ったが、途中エンジンの故障のため櫂でこいだ。
景色は水鳥の視線で少しずつ映り変わる。
鴨になったかのような気分だ。
薄暮の森はどこまでも深く、空の際は朝方のようで天頂に向かい深海を思わせる群青の急激なグラデーション。
小一時間もこいだ、回りは太古の葦の沼に変わり、鳥のさえずりと顔をなでる風が心地よい。
一昨日は会社のデスクにいて今は果てしなく遠い極北の地を漂っている自分が不思議な気がした。

彼の指さす方向を見ると水面に突き出た岩と森の間にいくつかの小屋が見える。
森に生い茂る小さな薄紫の花々と彼の奥さんが出迎えてくれた。
すぐに母屋から水辺を五十歩ほどの所にある小さなログハウスのサウナ小屋に案内された。
身体を暖めると彼は銀杏色の洗濯石鹸で頭まで洗ってくれた。
ありがたくて、忘れていた心の恥ずかしさに、妙に心が沈む。
彼の後に続いて石鹸のまま水に飛び込んだ。温まっては飛び込んだ。それを何回も繰り返した。
母屋に戻るとポチャーポチャー、霧の中から子供がボウトで帰って来る。
堅いライ麦パンにチーズ、ぬるいビールを出され電気が来ていないことに気付く。
冷蔵庫も水道もなく夜はランプで三週間もいるらしい。
彼女は白いブロンドのまつ毛を震わせ笑いながら、「あと十日、家に帰らなくちゃならないの、ずーっと三人でここに暮らしたいの。」と言う。
彼らが帰る家というのは、十数軒かの深い森と森の間の静かな静かな集落なのである。

明け方、眠っている美しい少年に別れを告げボウトに乗った。
振り返るとすでに霧は晴れ、立ち枯れ材で造られた丸太小屋が銀灰色に輝いていた。

遠い記憶の伊豆、あの漁師小屋を思った。

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